御神酒ができるまで
   
お酒は、昔から「御神酒(おみき)のあがらぬ神はなし」といわれてきたように、神事には欠かせない存在です。では神様にお供えする「御神酒」はどのような課程を経てできあがるのでしょうか。知っているようで知らない日本酒の知識、このコラムを読んだ貴方は、お酒博士間違いなし!


まず、日本酒を造るにはお米を作らなければなりません。そのお米も粳米(うるちまい)では無く、山田錦や吟吹雪といった「酒造好適米」(注1)といわれるお米が望ましいのです。

お米を収穫した後には、お米を精米しなければなりません。この精米歩合(注2)によって、大吟醸や吟醸、本醸造というようにお酒の種類が決まります。

次に、精米されたお米を洗い(米の表面の糠(ぬか)を落とす)、充分に水を吸わせた上で蒸します。この蒸し米は、麹(注3)酒母(注4)・仕込み用へ3つに分けられます。この麹・酒母・蒸し米と水を合わせて、仕込みをします。普通は4日かけて3回に分けて行われますが、これが「三段仕込み」というものです。

1日目は酒母と同じ量の麹米、蒸し米、水を仕込みます。これを「初添え」といいます。
2日目は「踊り」といって1日休みで、この時に麹と酒母が増殖します。
3日目は酒母と初添えの仕込み量の倍量の麹米、蒸し米、水を仕込みます。これを「仲添え」といいます。
4日目は仲添えの倍量の麹米、蒸し米、水を仕込みます。これを「留添え」といいます。

この仕込みタンクの中で、「でんぷん」から「糖」へ、そして「アルコール」への変換が進み、もろみになります。この変換をひとつの過程で同時にやってしまうのは、日本酒だけの様です。この後、熟成したもろみを絞り、酒粕と白濁した酒に分けます。これが「生原酒」で、この時点ではまだ酵母が生きています。それを濾過・火入れ殺菌・割り水し、貯蔵したものが我々が普段「御神酒」に使う清酒です。

この様に手間暇かけて日本酒は造られるのです。日本酒って奥深いですね。


注1)酒造好適米
日本酒造りに必要な米の成分はデンプン質で、その他のタンパク質や脂質などは雑味の元となる。
そのため、酒米として用いる米は、食用の米より多く精米し、糠を削り落とす。この作業を醸造用語で「磨く」という。
酒造好適米は、中心部の白色透明な心白(しんぱく)という部分が大きい。心白はデンプンが少なく柔らかい部分で、麹菌の菌糸が中に伸びやすく強い酵素力のある麹ができる。
酒母、もろみでの糖化もよい。酒造好適米は、この心白が大きいほか、米自体も大粒で割れにくい米である。
主な酒造好適米は次の通り。
山田錦、愛山、八反錦、山田穂、五百万石、備前雄町、美山錦、神力、亀の尾、八反35号、吟吹雪等。
創立60周年記念事業で使用したのは、吟吹雪。

注2)精米歩合
白米のその玄米に対する重量の割合。精米歩合60%というときには、玄米の表層部を40%削り取ることをいう。
●計算式→白米重量(s)÷玄米重量(s)×100=%
米の胚芽や表層部には、タンパク質、脂肪、灰分、ビタミンなどが多く含まれ、これらの成分は、清酒の製造に必要だが、多すぎると香りや味を悪くする。
精米はこれらの成分を減らす作業。ちなみに家庭で食べている米は、92%程度の白米(玄米の表層部を8%程度削り取る)である。

注3)麹
麹は蒸した米に麹菌というカビの胞子を振りかけて育成させたもので、これを「米麹」といい、通常単に麹と呼ぶ。
麹はお米のデンプンをブドウ糖に変えるという大変重要な役割を担っている。「一に麹ありき」とされ、良い麹ができればお酒造りの7割は終了といわれるほど、麹造りは重要であり、味にも大きな影響を与える。
数ある麹菌の中でも酒造りには「黄麹菌(きこうじきん)」という種類の菌を用いる。
この他麹菌には黒、白、赤などの種類があり、黒は泡盛、白は焼酎、赤は紹興酒などに用いられる。

注4)酒母(しゅぼ)
アルコール発酵を行う酵母という微生物を小さなタンク内で大量に培養した液のこと。乳酸も大量に含まれていて、酵母を外敵から守っている。
ブドウ糖をアルコールに変えることから、これを酒の母と書いて酒母(しゅぼ)と呼んでいる。なお、酵母の数は「cell」(セル)という単位で呼ばれている。

 

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